映画制作の現場で活躍する"作り手"の方々にスポットを当てた連載企画「MOVIE MAKER」
第4回のゲストは、『くらげくん』で国内映画祭13冠という快挙を成し遂げ、もはや自主制作映画界で知らない人はいない片岡翔監督です。
くらげくんと虎太郎、二人の少年の叶わぬ恋を描いた『くらげくん』は、橋口亮輔、矢口史靖など、日本を代表する監督を輩出してきたPFF(ぴあフィルムフェスティバル)アワード2010準グランプリに選ばれ、『ぐるりのこと。』などで知られる橋口亮輔監督に「感動と勇気をもらった」と言わしめた作品。年の瀬感じる下北沢にて、目下飛ぶ鳥を落とす勢いの片岡監督に様々なことを伺ってきました。
── 片岡監督が映画を志すターニングポイントはどんな感じだったんですか?
片岡 小さい頃からおもちゃ屋や雑貨屋、宇宙飛行士、指揮者なんかの無謀なものまで、やりたいことがいっぱいありました。高校卒業後、勉強したくなかったんで、大学には進学せず、とりあえず地元の遊園地で働き始めたんですけど、二十歳くらいのときに、「自分の本当にやりたいことを、そろそろ一つに決めないとダメだな」って思うようになってきて。
── 働き始めてもやりたいことがずっと残っていたんですね。
片岡 「何になったら一番楽しい人生になるかなぁ」って考えたときに、映画が好きだったんで、"なれる"、"なれない"を考えずに、単純に映画監督が一番楽しそうだなって思いました。じゃあ映画監督でいこう、と。僕は結構楽天家ですから(笑)。
── すごい行動力ですね!映画は独学ですか?
片岡 2002年に北海道から上京してきて、「ニューシネマワークショップ」という週一回の小さな映画学校に通いました。実は卒業後、あまり映画を撮ってなかったんですけど、2年後の2004年くらいから本格的に撮り始めました。
── でもなかなかモチベーションを維持するのって大変じゃないですか?
片岡 最初は長めの作品、60分の作品とかを撮ってたんですけど、短編を1本作ってみたら長編より自分にはやり易くて。あまり労力をかけなくても作品を完成させることが出来る、っていう面白さを発見しました。そしたらその作品が映画祭で上映されることに決まって。その経験が楽しくて、また来年も参加したいっていうモチベーションになりましたね。それからはその連続で、その度に徐々に本気になっていった、っていう感じです。
── 楽をするための努力は厭わない。人はそれを努力と呼ぶ。
片岡 自分がちょっと飽きやすい、っていうのがあるかもしれないですね(笑)。短編は短いスパンで撮れますし。僕の場合は長い期間とお金をかけて一つの作品を作る、っていうやり方より、短い時間の作品をいろんなジャンルでたくさん作った方が楽しいし、それだけチャンスもあるのかなって思ってます。どれだけ時間をかけても、やっぱり作品は完成させなきゃ意味が無い、っていうこともありますし。
── 片岡監督ならでは、というか自分自身の色みたいなものって何だと思いますか?
片岡 それが分かってきたのはようやく最近のことですね。僕は結構美術とか衣装にこだわるんですけど、何故かというと、自主映画で美術、衣装にまでこだわってる人ってなかなかいないですよね。やっぱり他の自主の監督達は、美術、衣装よりもっと他のところにこだわろうとすると思いますから。でもだからこそ、他にはない色を出せるかなって思って。意識的にこだわるようにしていますね。
── 人のやらないことをやる。鉄則ですね。
片岡 あとは個人的に好きなジャンルで言うと、「ファンタジー」が一番好きです。アニメですけど、宮崎映画は大好きですし。一番好きなのは『ラピュタ』。映画では、『ロード・オブ・ザ・リング』。あの壮大な世界観はやっぱり魅力的ですよね。
── 一番お金かかるジャンルじゃないですか!
片岡 そうなんです(笑)。「ファンタジー」ってなかなかお金がないと作れないので、僕の場合は、リアルの中に少しファンタジーが含まれるような脚本を心掛けて書いていますね。
── 少しファンタジー。まさに『くらげくん』!!子供を撮るのにもやっぱりこだわりがあるんですか?
片岡 そうですね。美術、衣装にこだわって、ファンタジー的な要素を入れるっていうのが自分の色かなっていうのと、あとは子供。子供を撮ることが多いので、子供の表現というのが自分のテーマになってる部分もあります。子供のする行動はほんと見ていて面白いですよね。大人より面白い。
── でも子供を撮るのは難しそうです...
片岡 子供って、一つのことに集中しちゃう所があって、セリフを覚えようとすると、今度は動きが覚えられないみたいな。それはどの子供にも共通していますね。一応一通りの演技は付けるんですけど、たいていの子供は、セリフを覚えるのは得意なんですけど、動きが覚えられない、っていうのがあって難しいです。撮影の時は毎回大変で、クランクアップの度に「もう子供は嫌だ」ってスタッフに言ってるんですけど、でもまた脚本考えてると子供の脚本が出来ちゃってるんですよ。また子供か~って(笑)。
── どんな風にして映画の構想が生まれるんですか?
片岡 日常の中で常に考えてはいますね。家だと集中できないので、ほぼ毎日スタバに行って何かしらの作業をしているっていうのはお決まりです。
── スタバでの人間観察で面白いキャラクターを思いついたり。
片岡 面白い人を発見したら、すかさずメモったりっていうのも多いですね。あまり面白過ぎても自分の仕事に集中出来ないですけど(笑)。『くらげくん』の場合がそうなんですけど、"くらげくん"というフレーズがひらめいたんです。どんなキャラクターだろう?と、男の子なんだけど、ふわふわしてて、なよなよしたキャラだったら面白いなって。そんな風にして、あるフレーズから着想することも結構ありますね。
── へぇー!面白いです。
── 長編(商業)映画についてはどうでしょう?
片岡 そうですね。そろそろ長編を撮らなきゃな、っていう気持ちはあります。最終的には商業映画を撮りたいので、そこにつながるような作品を撮っていきたいです。長編では子供が主人公で、家族の物語という構想は既にあります。でもまだまだ短編も撮りたいですし、やっぱり短編は好きなので年に1本くらいは撮り続けていくでしょうね。
── でも『くらげくん』で新人監督の登竜門と言われる「ぴあ」を受賞したということは...?
片岡 いやそんな受賞したからって、プロデューサーが寄ってきて「ねぇ、君」とは言ってこないですよ(笑)。今のところ変わりはないですね。あれは受賞した人にスカラシップ(PFFスカラシップ)へ応募する権利が与えられて、その中から脚本が1本だけ選ばれるんですよ。そこで選ばれたら、晴れてメジャーデビュー出来るんですけどね。
── どうですか?他の監督達と比べてもかなり若手の方じゃないですか?
片岡 いやいや、「ぴあ」の中じゃ年上の方ですよ。「ぴあ」は若い才能の発掘、ってところに重点を置いていますからね。年齢層は低めです。何歳ですか?
── 僕ら23歳と24歳です。
片岡 えーっ、僕より若い!他の映画祭では僕も若手と呼ばれることが多いですけどねぇ。
── 今がスカラシップに向けて脚本を書いてる大事な時期なんですね。
片岡 これがなかなか進んでいなくて(笑)。並行して制作が進んでいる作品もありますし。
── 何かを創る、というのはもともと好きだったんですか?
片岡 父が、日本人形からフランス人形まで様々な人形を扱う仕事をしていて。父は本当に人形が大好きで仕事にした、っていう人なのでその父を見て育ったっていうのは大きいと思います。現在僕自身も父と一緒に働いています。いろんな芸術家の方達と出会うことも出来るし、すごく刺激になりますね。映画の作風が美術にこだわったり、っていうのはそういうところで培った部分もあると思います。
── 客観的に見て自分自身どんな性格だと思いますか?
片岡 どうですかね~。子供っぽいと思います(笑)。子供好きですし。みんなでわいわいゲームしたり、ぬいぐるみとか絵本とか、子供が好きな物が好きなんですよね。ぬいぐるみを集めるのが好きで、ベットにいっぱい並んでいますよ。
── えーっ(笑)!?
片岡 キャラクターものとかではないですよ(笑)!ちょっと古いアメリカのぬいぐるみだったりとか、古着屋に置いてるようなボロボロな物だったりとかなんですけど、「やっぱり人形好きな父の血を引いてるんだなぁ」って思います。この間撮った『ぬくぬくの木』という作品では、いろんな方の協力を得てぬいぐるみを400体集めて撮影しました。そういうところで、自分の好きなことが作品の独特な世界観に繋がれば一番いいなって思ってます。
── 片岡監督は6人兄弟だそうですね。どんな子供でしたか?
片岡 そんな情報どこで調べたんですか(笑)!?
── あらゆる情報網を駆使してます(笑)。
片岡 (笑)。僕は5番目なんですけど、兄弟はみんなうるさくて、僕が一番静かなんですよ。僕は常に上の4人を静かに観察して生きてきたところがあるんですけど、その観察力っていうのは映画の表現につながっているのかなと思います。たぶん人を描く上で根底にありますね。
── 兄弟やご家族は監督が映画を撮ることについて、どう思ってるんですか?
片岡 家族はみんな協力的にしてくれます。一緒に働いている父は仕事でかなり融通を利かせてくれますし、実は姉と弟は映画制作を手伝ってもくれています。
── 『くらげくん』を観終わったとき、クレジットで「片岡」という苗字を見かけたんでひょっとして、と。
片岡 この間ついに兄まで手伝ってくれたんですよ(笑)。
── 片岡家で映画制作していたんですね(笑)。
片岡 いやぁ、クレジットが片岡ばかりで埋まるのは嫌なんですけどね(笑)。 ...
インタビュー前、下北沢にて行われた、とある短編映画上映会に招待していただいた。上映会には上映作品それぞれの監督も来ており、上映終了後、打ち上げを兼ねた飲み会も企画されている様子。「打ち上げもあったのに、すみません」と謝る僕らに、「いや、あまりああいうの好きじゃなくて、ちょうど良かった」と片岡監督。上京後、通っていた映画学校でも「あまり親しい友人は出来なかった」という。飲み会や学校での友達付き合いは、監督同士、学友同士の貴重な意見交換の場ではあるが、ときに馴れ合いや群れと化してしまう一面も持つ。学校卒業後、たった一人で猫目映画を起ち上げた片岡監督にとっては、あまり必要の無いことなのかもしれない。だからこそ、「日常の中で常に考えている」という言葉も何の違和感も無く入ってきた。酒もタバコもやらないという片岡監督の「最後は孤独な闘い」という覚悟を感じたような気がした。
快くインタビューに応じていただき、片岡監督どうもありがとうございました。
第4回のゲストは、『くらげくん』で国内映画祭13冠という快挙を成し遂げ、もはや自主制作映画界で知らない人はいない片岡翔監督です。
くらげくんと虎太郎、二人の少年の叶わぬ恋を描いた『くらげくん』は、橋口亮輔、矢口史靖など、日本を代表する監督を輩出してきたPFF(ぴあフィルムフェスティバル)アワード2010準グランプリに選ばれ、『ぐるりのこと。』などで知られる橋口亮輔監督に「感動と勇気をもらった」と言わしめた作品。年の瀬感じる下北沢にて、目下飛ぶ鳥を落とす勢いの片岡監督に様々なことを伺ってきました。
ぬいぐるみ好き!?な映画監督
一番楽しい人生を送るには
── 片岡監督が映画を志すターニングポイントはどんな感じだったんですか?
片岡 小さい頃からおもちゃ屋や雑貨屋、宇宙飛行士、指揮者なんかの無謀なものまで、やりたいことがいっぱいありました。高校卒業後、勉強したくなかったんで、大学には進学せず、とりあえず地元の遊園地で働き始めたんですけど、二十歳くらいのときに、「自分の本当にやりたいことを、そろそろ一つに決めないとダメだな」って思うようになってきて。
── 働き始めてもやりたいことがずっと残っていたんですね。
片岡 「何になったら一番楽しい人生になるかなぁ」って考えたときに、映画が好きだったんで、"なれる"、"なれない"を考えずに、単純に映画監督が一番楽しそうだなって思いました。じゃあ映画監督でいこう、と。僕は結構楽天家ですから(笑)。
── すごい行動力ですね!映画は独学ですか?
片岡 2002年に北海道から上京してきて、「ニューシネマワークショップ」という週一回の小さな映画学校に通いました。実は卒業後、あまり映画を撮ってなかったんですけど、2年後の2004年くらいから本格的に撮り始めました。
── でもなかなかモチベーションを維持するのって大変じゃないですか?
片岡 最初は長めの作品、60分の作品とかを撮ってたんですけど、短編を1本作ってみたら長編より自分にはやり易くて。あまり労力をかけなくても作品を完成させることが出来る、っていう面白さを発見しました。そしたらその作品が映画祭で上映されることに決まって。その経験が楽しくて、また来年も参加したいっていうモチベーションになりましたね。それからはその連続で、その度に徐々に本気になっていった、っていう感じです。
── 楽をするための努力は厭わない。人はそれを努力と呼ぶ。
片岡 自分がちょっと飽きやすい、っていうのがあるかもしれないですね(笑)。短編は短いスパンで撮れますし。僕の場合は長い期間とお金をかけて一つの作品を作る、っていうやり方より、短い時間の作品をいろんなジャンルでたくさん作った方が楽しいし、それだけチャンスもあるのかなって思ってます。どれだけ時間をかけても、やっぱり作品は完成させなきゃ意味が無い、っていうこともありますし。
『くらげくん』 14分
美術+衣装+ファンタジー+子供=?
── 片岡監督ならでは、というか自分自身の色みたいなものって何だと思いますか?
片岡 それが分かってきたのはようやく最近のことですね。僕は結構美術とか衣装にこだわるんですけど、何故かというと、自主映画で美術、衣装にまでこだわってる人ってなかなかいないですよね。やっぱり他の自主の監督達は、美術、衣装よりもっと他のところにこだわろうとすると思いますから。でもだからこそ、他にはない色を出せるかなって思って。意識的にこだわるようにしていますね。
── 人のやらないことをやる。鉄則ですね。
片岡 あとは個人的に好きなジャンルで言うと、「ファンタジー」が一番好きです。アニメですけど、宮崎映画は大好きですし。一番好きなのは『ラピュタ』。映画では、『ロード・オブ・ザ・リング』。あの壮大な世界観はやっぱり魅力的ですよね。
── 一番お金かかるジャンルじゃないですか!
片岡 そうなんです(笑)。「ファンタジー」ってなかなかお金がないと作れないので、僕の場合は、リアルの中に少しファンタジーが含まれるような脚本を心掛けて書いていますね。
── 少しファンタジー。まさに『くらげくん』!!子供を撮るのにもやっぱりこだわりがあるんですか?
片岡 そうですね。美術、衣装にこだわって、ファンタジー的な要素を入れるっていうのが自分の色かなっていうのと、あとは子供。子供を撮ることが多いので、子供の表現というのが自分のテーマになってる部分もあります。子供のする行動はほんと見ていて面白いですよね。大人より面白い。
── でも子供を撮るのは難しそうです...
片岡 子供って、一つのことに集中しちゃう所があって、セリフを覚えようとすると、今度は動きが覚えられないみたいな。それはどの子供にも共通していますね。一応一通りの演技は付けるんですけど、たいていの子供は、セリフを覚えるのは得意なんですけど、動きが覚えられない、っていうのがあって難しいです。撮影の時は毎回大変で、クランクアップの度に「もう子供は嫌だ」ってスタッフに言ってるんですけど、でもまた脚本考えてると子供の脚本が出来ちゃってるんですよ。また子供か~って(笑)。
『Mr.バブルガム/Mr. Bubblegum』 13分
"くらげくん"きっかけ
── どんな風にして映画の構想が生まれるんですか?
片岡 日常の中で常に考えてはいますね。家だと集中できないので、ほぼ毎日スタバに行って何かしらの作業をしているっていうのはお決まりです。
── スタバでの人間観察で面白いキャラクターを思いついたり。
片岡 面白い人を発見したら、すかさずメモったりっていうのも多いですね。あまり面白過ぎても自分の仕事に集中出来ないですけど(笑)。『くらげくん』の場合がそうなんですけど、"くらげくん"というフレーズがひらめいたんです。どんなキャラクターだろう?と、男の子なんだけど、ふわふわしてて、なよなよしたキャラだったら面白いなって。そんな風にして、あるフレーズから着想することも結構ありますね。
── へぇー!面白いです。
ぴあフィルムフェスティバル受賞
── 長編(商業)映画についてはどうでしょう?
片岡 そうですね。そろそろ長編を撮らなきゃな、っていう気持ちはあります。最終的には商業映画を撮りたいので、そこにつながるような作品を撮っていきたいです。長編では子供が主人公で、家族の物語という構想は既にあります。でもまだまだ短編も撮りたいですし、やっぱり短編は好きなので年に1本くらいは撮り続けていくでしょうね。
── でも『くらげくん』で新人監督の登竜門と言われる「ぴあ」を受賞したということは...?
片岡 いやそんな受賞したからって、プロデューサーが寄ってきて「ねぇ、君」とは言ってこないですよ(笑)。今のところ変わりはないですね。あれは受賞した人にスカラシップ(PFFスカラシップ)へ応募する権利が与えられて、その中から脚本が1本だけ選ばれるんですよ。そこで選ばれたら、晴れてメジャーデビュー出来るんですけどね。
── どうですか?他の監督達と比べてもかなり若手の方じゃないですか?
片岡 いやいや、「ぴあ」の中じゃ年上の方ですよ。「ぴあ」は若い才能の発掘、ってところに重点を置いていますからね。年齢層は低めです。何歳ですか?
── 僕ら23歳と24歳です。
片岡 えーっ、僕より若い!他の映画祭では僕も若手と呼ばれることが多いですけどねぇ。
── 今がスカラシップに向けて脚本を書いてる大事な時期なんですね。
片岡 これがなかなか進んでいなくて(笑)。並行して制作が進んでいる作品もありますし。
自身について
── 何かを創る、というのはもともと好きだったんですか?
片岡 父が、日本人形からフランス人形まで様々な人形を扱う仕事をしていて。父は本当に人形が大好きで仕事にした、っていう人なのでその父を見て育ったっていうのは大きいと思います。現在僕自身も父と一緒に働いています。いろんな芸術家の方達と出会うことも出来るし、すごく刺激になりますね。映画の作風が美術にこだわったり、っていうのはそういうところで培った部分もあると思います。
── 客観的に見て自分自身どんな性格だと思いますか?
片岡 どうですかね~。子供っぽいと思います(笑)。子供好きですし。みんなでわいわいゲームしたり、ぬいぐるみとか絵本とか、子供が好きな物が好きなんですよね。ぬいぐるみを集めるのが好きで、ベットにいっぱい並んでいますよ。
── えーっ(笑)!?
片岡 キャラクターものとかではないですよ(笑)!ちょっと古いアメリカのぬいぐるみだったりとか、古着屋に置いてるようなボロボロな物だったりとかなんですけど、「やっぱり人形好きな父の血を引いてるんだなぁ」って思います。この間撮った『ぬくぬくの木』という作品では、いろんな方の協力を得てぬいぐるみを400体集めて撮影しました。そういうところで、自分の好きなことが作品の独特な世界観に繋がれば一番いいなって思ってます。
── 片岡監督は6人兄弟だそうですね。どんな子供でしたか?
片岡 そんな情報どこで調べたんですか(笑)!?
── あらゆる情報網を駆使してます(笑)。
片岡 (笑)。僕は5番目なんですけど、兄弟はみんなうるさくて、僕が一番静かなんですよ。僕は常に上の4人を静かに観察して生きてきたところがあるんですけど、その観察力っていうのは映画の表現につながっているのかなと思います。たぶん人を描く上で根底にありますね。
── 兄弟やご家族は監督が映画を撮ることについて、どう思ってるんですか?
片岡 家族はみんな協力的にしてくれます。一緒に働いている父は仕事でかなり融通を利かせてくれますし、実は姉と弟は映画制作を手伝ってもくれています。
── 『くらげくん』を観終わったとき、クレジットで「片岡」という苗字を見かけたんでひょっとして、と。
片岡 この間ついに兄まで手伝ってくれたんですよ(笑)。
── 片岡家で映画制作していたんですね(笑)。
片岡 いやぁ、クレジットが片岡ばかりで埋まるのは嫌なんですけどね(笑)。 ...
インタビュー前、下北沢にて行われた、とある短編映画上映会に招待していただいた。上映会には上映作品それぞれの監督も来ており、上映終了後、打ち上げを兼ねた飲み会も企画されている様子。「打ち上げもあったのに、すみません」と謝る僕らに、「いや、あまりああいうの好きじゃなくて、ちょうど良かった」と片岡監督。上京後、通っていた映画学校でも「あまり親しい友人は出来なかった」という。飲み会や学校での友達付き合いは、監督同士、学友同士の貴重な意見交換の場ではあるが、ときに馴れ合いや群れと化してしまう一面も持つ。学校卒業後、たった一人で猫目映画を起ち上げた片岡監督にとっては、あまり必要の無いことなのかもしれない。だからこそ、「日常の中で常に考えている」という言葉も何の違和感も無く入ってきた。酒もタバコもやらないという片岡監督の「最後は孤独な闘い」という覚悟を感じたような気がした。
快くインタビューに応じていただき、片岡監督どうもありがとうございました。
片岡翔
映画監督/猫目映画(Nekome Film)代表
1982年北海道生まれ
2004年より映像制作を開始。「猫目映画」として東京で活動を展開。ショートフィルムを中心に制作し、エンターテイメントからエコや社会問題をテーマにした作品まで、多様なジャンルを発表。独特な脚本と、衣装・美術などのディティールに凝った世界観で高い評価を受けている。主な受賞歴として、ショートショートフィルムフェスティバルにおいて、2009年に『28』 が、2010年には『Mr.バブルガム』が観客賞を受賞。近作『くらげくん』はPFFアワード 2010で準グランプリを受賞したほか、7つの映画祭でのグランプリを含む13冠を達成。また『Mr.バブルガム』と『ゲルニカ』が札幌国際短編映画祭2010にて第五回記念特別賞を受賞する。
- INFO -
猫目映画ウェブサイト: http://www.nekomefilm.com
twitter: http://twitter.com/#!/NekomeFilm
YouTube: http://www.youtube.com/user/NekomeFilm
主な作品
・『くらげくん』 2009年 - 第32回ぴあフィルムフェスティバル *準グランプリ 他多数受賞
・『Mr.バブルガム』 2009年 - ショートショートフィルムフェスティバル&アジア 2010 *ジャパン部門観客賞 他多数受賞
・『ゲルニカ』 2010年 - 札幌国際短編映画祭2010 *第5回記念特別賞
・『ぬくぬくの木』 2011年 - 「経済産業省/公益財団法人ユニジャパン」製作作品
『くらげくん』
乙女チックなくらげくんはガキ大将タイプの虎太郎が大好き。引越しで離れ離れになってしまう2人は電車に乗って旅へ出た。少年の一途な想いは届くのか? 永遠のノスタルジーと現代が同居する新世代の子供映画が誕生!
・第32回ぴあフィルムフェスティバル *準グランプリ
・那須国際短編映画祭2010
・第19回東京国際レズビアン&ゲイ映画祭 *グランプリ
・Shinsedai Film Festival 2010(カナダ・招待上映)
・ひめじ国際短編映画祭2010 *監督賞
・長岡アジア映画祭2010 *グランプリ
・第2回下北沢映画祭 *グランプリ *観客賞
・ショートピース!仙台短篇映画祭2010(招待上映)
・西東京市民映画祭2010 *準グランプリ *観客賞
・ふかや映画祭2010 *グランプリ
・北海道大学 CLARK TEATER 2010(招待上映)
・第13回小津安二郎記念・蓼科高原映画祭 *グランプリ
・山形国際ムービーフェスティバル2010 *ムービーオン賞
・福井映画祭2010
・逗子湘南ロケーション映画祭2010 *グランプリ
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